2011年6月4日土曜日

福沢諭吉集より








「商人の道 」



農民は連帯感に生きる。



商人は孤独を生甲斐にしなければならぬ。 



總べては競争者である。



農民は安定を求める。



商人は不安定こそ利潤の源泉として、喜ばねばならぬ。



農民は安全を欲する。



商人は冒険を望まねばならぬ。



絶えず危険な世界を求めそこに、



飛込まぬ商人は利子生活者であり、隠居であるにすぎぬ。



農民は土着を喜ぶ。



大地に根を深くおろそうとする。



商人は何処からでも養分を吸い上げられる浮草でなければならぬ。



その故郷は住む所すべてである。



自分の墓所はこの全世界である。



先祖伝来の土地などと云う商人は、



一刻も早く算盤を捨てて鍬を取るべきである。



石橋をたたいて歩いてはならぬ。



人の作った道を用心して通るのは、



女子供と老人の仕事である。



我が歩む処そのものが道である。



他人の道は自分の道でないと云う事が商人の道である。