2012年4月12日木曜日

母なる樹








白樺が「母なる樹」と呼ばれることには意味があって、それはこの樹の果たす生態学的な役割に関係があるようだ。



つまり、白樺は樹木の育たない荒れ地にまず繁茂し、枝をひろげ木陰を作って、他の樹木が生育しやすい環境を整えたうえで、自らは下地となって大地に還ってゆく。



こうした生態系全体の更新プロセスにおいて、その基礎あるいは母胎を提供するという位置づけが、白樺に「母」というメタ・イメージを賦与する背景となっているのだ。



樹木は生命の水をその身と大地に涵養し、太陽エネルギーを地球生態系に還元する。



酸素を生みだし、雲や木陰をつくって地域気象を調律し、樹液や果実で他の生物を養う。そして、自らの身体そのものを「母胎」として提供し、死してなお他を養うという植物的生命の根源的なあり方を、白樺は象徴的に示している。




母なる樹/竹村真一



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